オリジナル創作「瑠璃色イエスタデイ」の弐拾肆語です。



オリジナル創作連載2つ目、始動です。



なおこの作品は瀬緒さん宅「学園キメラ~俺とお前と時々キメラ~」の番外編的位置の作品で世界がリンクしていますのでご注意を。
世界観は学キメの世界の2年前の話となります。


自分で自分を閉じ込め守った少女の話。


▽以下オリジナル要素含みますので注意してくださいね。








『お母さん、お父さん。今日はどこに行くの?』

『え、ええ。コマリが喜ぶ所よ』

『ああ、きっとコマリが行って、嬉しい、楽しいと思える…場所かな』

『そうなの!?わぁ楽しみ!早く行こうよ、お母さん、お父さん』

『ええ…。あ、コマリ、今日はあの、その、力は大丈夫なの?制御できそう?』

『うん、大丈夫だとおもうよ』

『そう、それはよかった。さあ、行きましょ』



そう私の手を掴む、お父さんとお母さんの手は震えていた

その事の本当の意味も知らず…私は2人の手を離さないで、今から行くであろう楽しい場所に心踊っていた

そんな"楽しい場所"なんて

ないとも知らずに





*弐拾伍語「けっかい」





何か…声が聞こえる…

男の人の声…

これが誰なのか…私は知らない、関係ない

私はここで眠っていたいんだ



あの日、私が連れて行かれたのは"楽しい場所"なんかじゃなく

私を閉じ込める檻だった

檻と言っては何かおかしいかな、閉じ込めるための収監所と言う方が正しいのかもしれない

"特殊能力"

その力に怯えた私の両親は私がまだ幼い時に



私を捨てた



私が覚えてる両親の事は先ほどの会話だけ

それくらいあの時の私はショックが多すぎて

私の事なんてどうでもいいようにこの特殊能力を研究している施設に私を置いて

去っていた両親の事を記憶の隅に封印してしまった

だから私の家族の思い出はたったこの数回の会話だけ

それも今は悲しい思い出だ


その研究施設は表では孤児院と名乗っていた

両親がいない特殊能力持ちのキメラを集めて預かる。それが表向き

でも中では、研究が行われていたのだ



「……嫌だ。嫌です。力を使うなんて絶対に嫌!」



私は研究員に反発した

力を使うなんてもってのほかだった

私の力は…だって…自分を守るだけのそんな力だから


そう拒否し続けて…数年、私は研究所で12歳にまで成長した

でも一度も力は使わなかった


しかしそんな日々は続かない

ついに私は強制的に捕まり、手足の自由を奪われ、脅迫されて力を使うように命令された

怖い、怖い、怖い

なんで私がこんな目にあわないといけないの…?

私が何をしたっていうの?


私なんてもう…生きていたって…意味がない

この世から消えたい

消し去ってしまいたい!!!!


そう強く願って我を忘れた瞬間…

私の能力ははじめて暴走した





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「これか、シノン。暴走したキメラは」

「ああ。数年前、力を暴走させ、この研究所を破壊。そしてこの何重もの強い結界の力で自分の身を守り、眠っているとの事」

「ふむ。その結界で誰も近づけさせず、何年もこうやってひとりで眠っているという訳か」

「この結界が解けないと解決には至らないな。さてどうするゼフィール」

「そうだな…」



私、氷導組の当主である氷導ゼフィールはこの暴走したキメラの少女を助けるという任務のために

この今は亡き、特殊能力研究所を訪れていた



「しかし、特殊能力を研究するための施設とは、気に食わん」

「ゼフィールならそう思うと思ってた。しかしまずはこの事件の解決を優先に」

「ああ、折角雪月花より先にこの案件を見つけ出し、ここに来たんだからな」

「でも結界の力は強力なものだ。同じ力を持つ私にはこの結界は簡単には解けないぞ」

「ああ」



しかもその本人は何年も結界の中で眠ってしまっている

さて、どうしたものか



「ああ、これが噂の結界の少女ですか」

「こ、この声は…小森組の」



そこに現れたのは小森組の時期頭領候補である小森レッドと斑目チヤだった

因縁の小森組が…なぜもうここに気づいたのか?



「結界を何年も自分自身に張り、身を守る少女…ですか」

「……レッド。小森組はこの件は先に解決する。とか言い出すのか?」

「いや、僕ではどうする事も出来ませんね。僕には何の力も持ってないですから」

「(レッド、相変わらずの嘘だな。無効化の力は隠すつもり、か。しかし無効化にするには本人に直接触れるしかない、この状態じゃ無理か)」

「これは少々難問ですね。この力を解くためには。結界ってのが厄介です」

「手を出すなよ。これは氷導組が解決する案件だ。小森組になんて手柄は渡さん」

「さて、君達に解決できる案件なんでしょうかね?」

「…………」



相変わらず癇に障る奴だ

そう思った時だった



「ゼフィール様、ご報告します」

「なんだ、ワタルか。どうした?」

「はい、組員から連絡が。どうやら組の下っ端が、煉咲組の組員に手を出したとかで…」

「なんだと。はぁ…次から次と面倒事を…。おいレッド」

「なんです?ゼフィール」

「これは氷導組の案件だ。手を出すな」

「……どうしましょうかね」

「ふん」



そう一言、レッドに告げて私はその結界の少女の場所から去った

小森組の二人は何やら結界の少女を見て、考え込んでいる



「さて、この勝負は誰のものになるか。負けてやるつもりはないがな」





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「えっと…鳴宮サクヤです…今日からお世話になります…」

「はい、よろしくお願いしますね。サクヤさん」

「はい…シア様」

「そんな、シアでいいですよ?」

「そ、そういう訳には…」



今日また、新しい家族が増えました

レンさんが連れてきた女の子で、行く場所がないのだと

その為、お父様にレンさんが頼んで、そして私もその説得に加担し、見事ここに住んでもらう事になったのです



「これからの鳴宮さんのお仕事は、家事全般のお手伝いという事になります。さすがに鳴宮さんに組員に…ってのは無理がありますからね」



レンさんがサクヤさんに向かって説明する

私を見るよりレンさんを見る目の方が安心している気がするのはやはり信頼関係というものでしょうか



「また新しいキメラが増えたんだぞ…」

「またまたソウマさんは~。女の子が増えるって事はお嬢さんにもマツリさん以外の友達ができるって事だよ?喜ばなくちゃ」

「ぶー…」

「拗ねない、拗ねない」

「ホムラ、貴方は別にお嬢様を取られるとかそんな心配はしないんですね」

「嫌だなマツリさん。なんで俺が女の子相手に嫉妬しないといけないの?そんなに心狭く見える?」

「はい」

「あっはっはー。マツリさんってばそんな事はあるわけあるしないかもだしあったりしないかもね?」

「「どっち!?」」



ホムラとマツリとソウマの楽しそうに話す声が聞こえる中

私はサクヤさんに手を伸ばします



「私はネリネと鷲のキメラです、よければサクヤさんのキメラ教えてくださいますか?」

「は、はい…。鈴虫とアネモネの…キメラです」

「そうですか、教えてくださりありがとうございます。貴方はお兄様を探しているとの事。私達は力を貴女にお貸しします」

「え…お兄ちゃん…を?」

「はい、絶対に探し出してみせましょう?」

「は、はい……」



少し微笑むサクヤさん

これで少し安心してくれたらいいですが…

と、そんな時でした



「シアさん…!!!」

「トウマくん、どうかなされたのですか?」

「い、今、玄関に来客がきて…シアさんを出せって…怖くて」

「来客ですか?」

「お嬢さん、俺が先に誰か見てくるから。ここに…」

「いえ、私も一緒に行きます、ホムラ」

「はぁ…仕方ないな、マツリさんも一緒に行く?」

「はい、参りましょう。お嬢様」

「はい」



こうして玄関に向かった私達3人

そんな私達の来客者とは……



「久しいな、煉咲組次期頭領…煉咲シア」

「氷導組の頭領…氷導ゼフィール様…お久しぶりです」



敵対関係にある氷導組の、3人だったのでした





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25話でした。
いやはや大変遅くなりました、でもちゃんと完成できてよかったです。

まず最初の回想はコマリのものになります、彼女の過去が明らかになりましたね。
結界をはるという力、それがコマリの力ですがそれが暴走し自分を結界の中に閉じ込めて…何年もこのままだったのです。それを最初に見つけたのがゼフィール。
そんなゼフィールとレッド、チヤの会話なども描きましたがこんな感じでいいでしょうか?
あとワタルとシノンも初登場ですね、氷導組のゼフィールの補佐役という事で。

んで後半かはサクヤが煉咲組へ。一応組員ではなく家事のお手伝い係での住み込みとなります。
果たしてサクヤもどうなるのか…これも見ものかな?

挿絵はゼフィールとレッド。
ゼフィールが去る際のすれ違い風を描いてみました。ライバルですしね、そんな感じが出てたらいいなと。

次回は氷導組との対話から始まります。次回もよろしくお願いしますね。