オリジナル創作・青春センセーション!の11話になります。


この作品はオリジナル創作です。
オリジナル要素が大丈夫な方だけ追記からどうぞ!


ある春の日、俺はこの人達と出会った。青春部に――。


「友達篇」スタートです。
正式に認められた青春部。しかし更なる問題が蓮に襲いかかる!?


▽以下オリジナル要素含みますので注意してくださいね。




いままでのあらすじ by春日野美桜

部活に特化した全寮制の高校・蒼響学園。
そこに入学した小鳥遊蓮くんとわたし春日野美桜が出会ったのは『青春部』という部活でした。
青春部に半ば強制的に入部させられた蓮くんですが青春部が正式な部活になるにはあと一人部員が足らなかったのです。

そして高校に入学しても友人が出来なくて部活も入れなかったわたしは青春部に助けを求め、
わたしの依頼を解決するために青春部の皆さんと色々な部活を見学する事になるのです。
周さんから髪を切ってもらったり…色々な事をしてもらって少し勇気をもらったわたしですが、
青春部の前に現れたのは謳歌部という部活。
一年生の九頭竜くん、京ヶ峰くん、渕之上くんの三人による謳歌部に勝負を挑まれた青春部。
蓮くんと九頭竜くんの勝負が始まったのですが、色々ありながら結果は蓮くんの勝利。
そんな楽しい一日を過ごして、わたしの中で青春部の存在が大きくなって、
わたしは青春部に入部する事を決めたのです。

こんなわたしを快く迎え入れてくれた青春部の皆さん。
これからどんな毎日が待っているんでしょう。これからが楽しみです…!





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夕暮れに降る雨っていうのは、凄く綺麗に見えるのは何故なんだろう?
あのオレンジ色の空から落ちてくる雨粒。

雨が止んだ後に虹なんて架かればそれはもう美しい情景なんだろう。
しかしそれはただ見てる分だけで充分なのだ。

傘も持たず、荷物も背負い、疲れきった身体、残った僅かな体力を振り絞り歩いていて、
今ここがどこだか分からない状況に見る夕暮れの雨というのは不安心を煽るものでしかない。

今、俺達がいるのは、森。
右を見ても木、左を見ても木、振り返ってみても木。木の集合体が見える。
そう俺達がいるのは森の中。

森と言ってもちゃんと蒼響学園で管理されている合宿所が所有している敷地内だ。
普段は部活動の合宿などで使われる施設なのだそうだ。
そのため学園が整備してある程度人が通れる森林なのだが…

誰のせいとは言わないが…運悪く降ってきたのは雨だった。



「……雨、降って来やがったな」

「す…すみません九頭竜くん。わたし足手まといになってます…よね。
 ごめんなさいっ!皆さんに迷惑をかけてしまって…何度詫びたらいいのか…」

「春日野のせいじゃねーって。元はと言えば理人のせいなんだから。この方向音痴」

「なにおう!?陸だって陸だって…スタンプ集めるために動き回ってたじゃん」

「俺よりはしゃいで動き回ってずんずん先に一人で歩いて行ってたのお前じゃねーか。
 方向音痴のお前が先に進んで行ったらこうなるのは目に見えてただろーが!」

「じゃあ誰かおれを止めてよ!」

「知るかっ!」

「まぁまぁ陸くんも理人くんも落ち着いて。
 ほら今は雨を防げる場所を探すのが最優先でしょ?」

「昴の言う通りだな、春日野もこんな状態だしまずは雨宿りが先か…」

「うん、ほらさっさと動くよ。小鳥遊くんも」

「……ああ、分かった」



雨の中、俺達は森の中を進む。

歩けない春ちゃんを背負い歩く九頭竜。
そんな春ちゃんと九頭竜の荷物を二人の代わりに持つ渕之上。
雨に濡れてもう既に使い物にならなくなったであろう地図を持ちながら先頭を歩く京ヶ峰と俺。


何故こんな事になってんだ…?

それは遡ること、六日前。五月になったばかりの頃に遡る。





*11話「適当な友達との付き合い方」





桜は完全に散り、心地よい風が吹く五月の初め。
入学してそろそろ一ヶ月が経つ一年生にそろそろ油断と気の緩みが出てくるこの時期。
青春部は相変わらず部室にて五人が集まり依頼を待っていた。

先日正式に部活として認められた青春部。
部室の前には俺が入部した時とは違い、青春部と書かれた看板が飾られた。
作ったのは周さんらしい。どうでもいい情報だけど。

そして机に並べられたマグカップ五つ。
赤色、青色、黄色、緑色、桃色をメインとした色とりどりのマグカップがここにいる五人を表していた。



「あ…そういえば」



そんな放課後の穏やかな時間が流れるこの部室にて突然声を上げたのは青春部の賑やか元気印である不知火晃介だった。



「一年ってもうそろそろオリエンテーション合宿がある時期じゃないの?」

「あー…そういえばもうそんな時期なんだねぇ、そっか五月だもんね」

「オリエンテーション…?合宿…?」



突然挙げられた"オリエンテーション"と"合宿"という単語に蓮が反応し、
彼の深い緑寄りの黒色の髪のてっぺんに付いたアホ毛もピンと同時に動く。



「なんすか、それ」

「え…えぇぇぇ…」



蓮のそっけない返事に晃介が落胆した声を上げる。
だって知らねぇもんは知らねぇんだもん仕方ねーじゃん…。

そんな事を心の中だけに留めていた蓮に隣で少し遠慮がちだけども美桜がフォローを入れる。



「蓮くん…この前HRで説明があったよ?
 一年生全クラスで二泊三日のオリエンテーション合宿に行くって…」

「…え?…それ、マジ?」

「マジです…」



部室がしんと静まり返る。
し、仕方ねぇじゃん。HRなんてぼーっとしてるか、寝てるかのどっちかなんだし。
教室ではろくに話すやつなんていないし。
いや…渕之上と春ちゃんとは最近少し話したりはするんだけどそれ以外は全くで。
だから「合宿楽しみだね」みたいなそんな会話もしねーし。



「蓮くんの日頃の授業態度が心配になってきた…。
 寝てたりしてないよね?晃介みたいに」

「朔真っ!それじゃおれがいつも授業中寝てるみたいな言い方じゃん!当たってるけど!」

「当たってるんですかい」



晃介の授業態度が最悪な事が朔真によってさらっとばらされる中、
変な誤解を植え付けられそうなので一応弁解しておく。俺の保身の為だし。



「…大丈夫です、授業中はちゃんと起きてるんで。
 一応ノートもちゃんと取ってます。……一応」

「その不安が残る言い方…。
 このままじゃ中間テストが阿鼻叫喚になりそうで俺は今から頭が痛いよ…」

「大丈夫?朔ちゃん。水飲む?」

「…うん、もらう」



中間テスト…何だか嫌な単語が聞こえてきたけどこの際無視して…
今はその"オリエンテーション合宿"なるものについて話し合おうではないか。

俺はさり気なく話を戻す事にした。



「んで…そのオリエンテーションとやらは何する合宿なんですか?」

「まぁ簡単に言えば…一年生がこの学園に慣れて貰う為と、
 一年生同士に仲間意識を高めてもらうための簡単に言うとお泊り会だね」

「……ふーん。欠席してもいいですかね?」

「�泊ハ目だって!」



話を聞いただけで頭が痛い。
なんだよその合宿…。
小学中学の修学旅行だって地獄だった俺にまだ付きまとってくるのか…学校行事め。



「わたしは…蓮くんと一緒に行ける合宿楽しみ…だよ?
 友達出来て行くそんな行事とか…初めてなので。
 出来れば青春部の皆さんと一緒に行きたかったんですけど…。
 一年生だけだから…仕方ないですよね…」



そんな俺と正反対に隣に座る美桜は柔らかい表情で話す。

なんというかこの子は"友達"が出来た事が本当に嬉しいらしい。
友達と出来る事ならなんでもやりますな勢いで楽しそうな表情をする。
友達ってそんなにいいものなのか?俺には本当に理解出来ないけど。



「蓮ちゃんー。春ちゃんがこんなに言ってくれてるのにまだ行きたくないとかぬかすの?ぬかしちゃうの?」

「…春ちゃんは行きたいのかもですが、俺は行きたくないんす。
 そんなに言うなら代わりに周さん行って来てくださいよ」

「そんなのオレだって行きたいに決まってんじゃん。
 だってオレ、合宿の時まだ朔ちゃん晃ちゃんとこんな風に仲良くなってなかったしねぇ」

「…え?」



思いがけない台詞が周から飛び出し、俺は一瞬耳を疑った。
仲良くなって…なかった?



「出来れば一年前のやり直しでこのメンバーで合宿付いて行きたい気分だよ」

「周、無茶言わないの」



晃介と朔真はそんな周に普通に返し何も疑問に思ってなどいない。

俺の気にしすぎ?
そりゃあ一年前ならこの人達も一年生だ。入学して一ヶ月。
知り合ってなかった頃なのかもしれない。
だけど俺の中では何故か、何かが突っかかってその言葉が離れなかった。



「あの…そういえばオリエンテーション合宿で…合宿所の敷地内の森の中で
 オリエンテーリングとかやると聞いたんですが…」

「ああ、あの部活動対抗のね」

「部活動対抗…?」



やはり部活動に力を入れている学園だ。
何をやるにしても部活が関わってくるんだな。

朔真の説明によれば。
合宿所の敷地内の森の中にあるいくつかのチェックポイントを地図やコンパスなどを使って
探し当て全てのチェックポイントに辿り付き、
合宿所まで戻ってくるというオリエンテーリングがこのオリエンテーション合宿のメインイベントらしい。

そのイベントが部活対抗なのか。それじゃあ部活動対抗って事は…。



「……俺と春ちゃんが同じチームって事っすかね?」

「そうそう、そういう事」

「でもそれって…人数にばらつきがあるんじゃ…?
 人数が多い部とかはどうするんです?人気の部活とか」

「その場合はその部活内で最高十人最低五人ずつに分けられるんだよ。
 人気な部活なほどチームの数が増えるって事だね」



え?それって…じゃあ、そういう事ならば。まさか。



「俺達二人だから参加出来ないですね!」

「なんでそんなに蓮くん嬉しそうなの」

「しかも今までにないくらい清々しい嬉しそうな笑顔!」

「でもね、残念でした」

「え…?」



先程まで嬉しそうな顔をしていた蓮の顔が一気に冷めていく。
本当に参加出来ないと思って嬉しがっていたのか…。



「時間だね」

「え…?」



急に朔真がスマホで時間を確認する。
と、同時に急に部活の扉がバーンと開けられた。この乱暴な開け方は…まさか…。



「「「たのもおおおおおお!!!!」」」

「九頭竜陸ッ!」

「京ヶ峰理人!」

「渕之上昴!」


「「「我ら…学園生活を楽しみ謳歌する部活…謳歌部ッ!!!」」」


「ってまたお前らかよ」

「冷てぇ反応だなオイ!またって何だよ、またって!」



この登場の決まり文句。案の定謳歌部の連中だった。



「あ…陸達じゃん!あの勝負以来だなっ!」

「不知火先輩ちわーっす!有栖川先輩と水無月先輩も!」

「あの勝負以来ですね。あ、これつまらないものですが…」

「あ…りひちゃん特性のお菓子!?」

「はい。おれが作ったオレンジゼリーです。
 皆さんで是非食べてくださいね」

「ありがとう理人くん。昴くんも…さぁ中に入って入って」

「ありがとうございます、お邪魔しまーす」


「�狽チてあんた達いつの間にそんなに仲良くなってたんですか!?」



この前の勝負以来、この三人とはまともに話したりはしてなかったんだけど…
距離が近い俺や春ちゃんより何故か先輩三人と謳歌部三人の距離がめっちゃ縮まってるし!?

この状況にはさすがの美桜も驚いたらしく…。



「昨日の敵は…今日の友…って事、ですか?」

「そーゆー事。でもなぁ…」



陸はビシッと蓮と美桜を指し宣言する。



「俺様達はまだ諦めてねぇからな。
 お前ら二人をぜってぇに謳歌部に入れてやるからな!覚悟しとけよっ!」



そうか、まだ諦めてはいないって事か。

そんな事を言ってる最中でも朔真はお茶の準備を進め、理人は持ってきたゼリーをテーブルに並べる。
晃介はゼリーを見て目を輝かせてるし…。



「(何で俺達の間だけ修羅場なんだよ)」



しかしそんな雰囲気は陸が腕を下ろした瞬間に一気に飽和する。



「と…今日はそんな話をしに来た訳じゃないんだった。
 えっと…水無月先輩いいっすか?」

「うん。俺から説明するね」



説明?一体何を説明するんだ?

こほん。と声を整えて朔真はしっかりと部室にいる皆を見据える。
その雰囲気から真剣な話なんだろう。

少しの間を置き朔真は切り出した。





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「謳歌部は今日から"青春部預かり謳歌部"として青春部が一応だけど面倒をみる事になりました」

「「「「え!?」」」」



朔真が淡々と言った衝撃的な事実。
その事実に青春部四人が驚きの声を上げる…のだが。

"預かり"

この単語の意味がわかならない。何だ?"青春部預かり謳歌部"って。
同じ事を思ったようで美桜が朔真に問いかける。



「預かり…?って何ですか?」

「そっかまだ春ちゃん達はこの制度について知らなかったんだね。
 蓮くんも知らないみたいだし説明するね」



朔真がゆっくり分かりやすく説明をはじめてくれた。


預かりシステムとは。

この蒼響学園は比較的自由な部活動を展開していける学園である。
でもそのために大量の部活動が存在しておりその全てを学園側が補助していくのは厳しい。
そのため、新しい部活を作るには最低三人の部員が必要だが、三人だと非正式の部となり部室も部費も出ないシステムなのだ。
五人部員がいれば正式な部活として認められて部室も部費も提供される。
そんな正式ではない部活を補助するのがこの預かりシステム。
正式な部活のお預かりとして生徒会に承認してもらえば非正式の部はお預かり扱いになり、
預かってもらっている部の部室を共有したり、
学園の部活動関連のイベントでその正式な部のお預かりとして参加出来たり出来るのだ。



「というのが預かりシステムです」

「と…言う事は…九頭竜くん達の謳歌部は、青春部のお預かりになったって事ですか?」

「うん、そういう事だよ。
 これから謳歌部は一応正式名称としては"青春部預かり謳歌部"になったって事」



ほんの数日前、蓮と美桜を賭けて勝負をしどちらかが正式な部になるのかを競ったばかりなのに。
まさかそんな親密な展開になるとは…。
この事はもう知っているのだろう、陸と理人と昴の表情は先程とは変わらないままだ。



「と、言う事で。謳歌部としては少しというかかなり不服ではありますが…
 これから青春部預かり謳歌部としてお世話になりますっ!」

「「なりますっ」」



一斉に頭を下げる三人。
やっぱりこの前まで競ってた間柄には思えないほど丁寧な挨拶だ。
基本的にやはりいい奴らなんだよな、うん。
不服とか言ってるし、結構うざいというかやかましいけど。

しかしこの状況にかなり喜んでいる人達がいた。
あの熱血天然とナルシストだ。



「まさか…こんな日が来るとは…!周さん感激で泣いちゃいそう」

「嘘…嘘でしょ!?おれ達が…お預かりを持てる日がこんなに早く来るなんて!
 ねぇねぇ、朔真がこの三人に取り合ってくれたの?」

「いや…実はこれは高比良先輩からの命令で」

「高比良先輩の?」

「俺達も高比良先輩から言われたんす。青春部のお預かりになれーって」



また出た…高比良結弦。
何かしらこの人がこの青春部、謳歌部に関わって来るんだな。

朔真の説明はまだ続く。



「高比良先輩に青春部を正式な部にしてもらった際に頼まれたっていうか命令されたんだ。
 謳歌部を青春部のお預かりにしろって。
 あれは頼み事というか否を言わせない雰囲気漂わせてたからもう強制というか決定事項だったけどね」

「高比良先輩が…?やっぱりこの前迷惑かけたからですか…ね?」

「それもあると思うけど…。
 ほら青春部と謳歌部って活動内容的によく似てるじゃない?
だからじゃないかな?」

「……ちなみに九頭竜。謳歌部の活動内容って何なの?」

「ん?俺らの活動内容?決まってんじゃん。
"学校を思いっきり楽しんで遊ぶための部"。
 つまり学校中の楽しい事を見つけ出して楽しむっていうのが活動内容だな」

「……ただ遊ぶだけの部じゃん」

「遊ぶだけじゃなくて自分達も楽しむのがこの謳歌部なんだよ」



青春部と謳歌部。
まあ似たような部だ。一緒くたにする高比良先輩の判断は正しいと俺も思う。
でも、まさかこんな事になるとは…思ってもみなくて。

というか預かりシステム自体が初耳で驚いたし。



「で…話を最初に戻すよ?
 で…今度ある一年生の最初のイベント・オリエンテーション合宿。
 部活対抗のイベントが幾つかあると思うんだけど」

「……もしかして」



何だか嫌な予感がする。



「謳歌部が青春部のお預かりとして参加する事になるから。
 だから心配しなくてもオリエンテーリングに参加出来るよ、蓮くん」

「……やっぱり」



やはりこれらを仕組んだのは高比良先輩だった。

それもそうだ、学年での全員参加イベントで人数が足りないからという理由で
その部に所属している生徒をオリエンテーリングに参加させないとか学園側が許さないよな。

そういう事もあって高比良先輩は謳歌部を青春部のお預かりにしたのだろう。
恐らく今から他の部にくっつけるため謳歌部の面倒を見てくれる部を探すのも面倒とでも思って、
朔真に命令して青春部のお預かりにしたのだろう。

あの人ならやりそうな事だ。
まぁこの間迷惑をかけた見返りもありそうだけど。



「という訳で青春部…というか小鳥遊と春日野。
 お前らは今度の合宿では俺様と同じ班だ。
 やるからには一等賞しか狙わねぇからそのつもりで覚悟しておけよ!」

「オリエンテーション合宿ではどうぞよろしくね。
 というかこれからお預かり扱いになるので…末永くよろしくっていうか…」

「僕はクラス一緒だし素直に楽しみだよ。
 だから…小鳥遊くん、当日休んだりしないでね?」

「俺、当日は体調不良になる予定なんだけど…」

「�狽ヲぇ!?うん、分かったよ。
 当日は僕がしっかり寮の部屋まで迎えに行ってあげるね」



さり気なくサボろうと思っていたのに。
昴はしっかりと蓮を捕まえて当日は連れて行く気満々のようだ。



「(どうして…こんな事に…)」



蓮のひとりで平和に過ごす高校生活の夢。
それはもう叶う事がないのだと、諦めに近い溜息を吐いて、
もう既に数日後に迫ったオリエンテーション合宿に憂鬱になりながら項垂れるのだった。





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俺を見る沢山の目。沢山の視線。

昨日まで優しく俺を見ていてくれていたその目は

鋭くそして冷たく俺に突き刺さる。


何がどうしてこうなった?

俺はまだそれが理解出来ていなくて。

原因が何なのかも分からないまま立ち尽くす。



「……どうした…の?」



必死に絞り出して出した言葉はそんな疑問形だけ。

それも俺の周りにある複数の目には通じない。



「……お、俺は…だって…あれは…」



何か言わなければ。

でも何も言えない。

俺が何か言う度に更に冷たく鋭くなるその軽蔑する俺を見る目。


その目はあの時の"友達"を信じていた幼い俺を



殺したんだ――。





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五月某日の金曜日。
普段なら寮から徒歩十分の学園まで歩き、校門をくぐり、教室に入り授業を受けるのだが今日だけは違う。

オリエンテーション合宿一日目。
いつもの登校時間より早く学園に集まったのは蒼響学園についこの間入学したばかりの一年生の生徒全員。
学園前には大型バス三台が停まっており、
一年生はクラスは全部で三つなので俺達はクラス毎にバスに乗る事になっていた。

等々始まってしまう地獄のオリエンテーション合宿。
ちなみに昨日寝る前には青春部の先輩達から色々とメールが来たのは言うまでもない。

朔さんは『忘れ物はない?』『酔い止め持った?』な本当にお母さんのような心配メールを。
周さんは『このチャンスに同学年の友達を作るんだよ?ぼっち抜け出しファイト!』
などというやっぱりうざい内容のメールを。
晃さんは『おみやげよろしく!』という合宿とは関係ない晃さんらしいアホな内容のメールが届いていた。

この調子じゃ春ちゃんにもこの人達は同等の内容のものを送っているのだろう。
本当に暇なのかそれとも俺を心配して…いや、そんな事ある訳ないか。

そんな事を考えていたら学年主任が一年に集合をかけ改めて諸注意を説明を始める。
そしてついに俺はバスに乗り込んだ。

俺の地獄の三日間が始まったのだった――。













「……はあ」

「どうしたの小鳥遊くん。もしかしてバス酔いした?」

「だ、大丈夫ですか!?わたし酔い止め確か持ってきてたはず…。
 えっと…えっと…」

「別に酔ったとかじゃないんで酔い止めはいいですって」

「じゃあどうして溜息なんか吐いてたの?」

「…………」



そりゃ溜息も吐きたくなる。




バスに乗り込む時の事。

一年二組のバスに乗り込んだ俺。
奥の窓際へ座ろうと移動し一番奥の窓際に座ろうとしたその時



「小鳥遊くん。一緒に座ろう?」

「え…?」

「蓮くん、わたしも…隣座ってもいいかな?」



すぐそばに渕之上と春ちゃんが立っていた。
クラスの中でぼっちを貫いている俺に話しかけてくる物好きはこの二人しかいないので
そうだろうとは思ったけれど。



「まだわたし…クラスの中で隣に座れる友達なんていなくて。
 蓮くんと一緒に座りたいんだけどいいかな?あ、嫌ならそれでもいいんです。
 空いてる席探しますかから…!」

「いや…そこまで言ってないけど」

「僕も一緒に座りたいな。いいかな?」

「(この二人以外が俺の隣に座られても困るし…別にいっか)」



比較的関わりがある二人だ。
春ちゃんは同じ青春部の部員同士だし、渕之上は席は隣りだしそれにお預かりの謳歌部の一員でもある。



「……別に、好きにすれば」

「やった!ありがとうね小鳥遊くん」

「ありがとう…蓮くん。それでは失礼しますね…」



一番後ろの席は五人用だ。
窓際に俺が座りその隣に春ちゃん、そしてその隣に渕之上が座った。
三人で五人用の席を占領する事になってしまったけれども、
席の数は足りたようでそのままバスは合宿所に向けて出発した。


走り出すバスに流れる窓の外の風景をぼんやりと見ながら到着までの時間を潰す。
周りのクラスメイト達はそれぞれ友達同士で雑談をしながらワイワイと賑やかな時間が流れる。

まぁあと二時間くらいしたら目的地には着くだろうし寝るか…。
そんな事を考えていた時だった。



「何だかこういうのって楽しいよね。合宿所ってどんな感じなのかな?」

「蒼響学園の合宿所…ですもんね…何だか凄く立派そう…」

「確かに。ね!小鳥遊くんもそう思うでしょ?」

「……まぁ、そうかもね」

「相変わらずつれない人だね小鳥遊くんは。
 春日野さんは僕にも話してくれるようになったのに…」

「ま、まだ…話すのは緊張しますが…うぅごめんなさい」

「謝る事はないよ。これから慣れていけばいいんだよ。ね?小鳥遊くん」

「俺は慣れる気はないんですけど…」

「あははーそうですよねーそれが小鳥遊くんだよね」



渕之上と春ちゃんが隣で話している。
春ちゃんはやはり人と話すのはまだ緊張するようでたどたどしいのだが。

俺はあまり話したくはないし。スルーしながら目的地までやり過ごそうか。



「…………何だか嬉しいな。やっぱりいいなこういうの」

「え?渕之上くん、何か言いましたか…?」

「え?僕何か言ってた?あはは気のせいだよ」

「……??」

「あ、そうだ。僕お菓子持ってきてたんだけど…食べる?
 ほらほらいっぱい。ポテチとかクッキーとか一口サイズのチョコとか」

「わぁ…美味しそう…」

「春日野さんどうぞ。ほら小鳥遊くんも食べる?いっぱい食べていいよ?」

「ほらほら美味しそうだよ、蓮くん」

「…………いらない」

「そっか、じゃあ食べたくなったら言ってね。
 これとかこれとかもオススメだから」

「…………だからいいって。
 お前ら二人で食べてればいいじゃん。
 俺を巻き込まないでください」

「「……」」



俺が空気を悪くした。それはよく分かってた。
俺がこうやって楽しい会話に加わってもこうやっていつも空気が悪くなるだけだし。

それもそうだ。だって俺は友達が嫌だから。信じられないから。



「……蓮くん。
 そ、そうですね。蓮くんが嫌なら仕方ないです…。
 でも…わたしは蓮くんが一緒にお菓子を食べてくれるのを…待ってますから」

「…………」



春ちゃんの言葉に心底イライラした。
いや正確には春ちゃんにイライラしたのではなく彼女にそんな事を言わせてしまう俺に心底イライラしたのだ。

何でそんな事しか言えなかったのだろう。
二人は俺を想って隣に座ってくれたのだし話しかけてくれた訳だしお菓子も分けようとしてくれたのだ。

そんな二人の優しさを踏みにじった俺自身に

心底嫌気が差したのだ。



「(……いや、別にこのままでいいんだ。このままで。このままで俺は…)」



何故イライラしたのか、嫌気が差したのか。
原因は分からないまま俺は目を閉じてバスが目的地に着くのを待ちながら夢の中へ落ちていった――。





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「(つ…疲れた。話聞くだけってのも結構キツイよな)」



バスの中でいつの間にか寝てしまい目を覚ましたらバスは丁度合宿所に着く所だった。
バスを降りて自分の荷物を持ち合宿所のそれぞれが泊まる部屋に移動する。
ちなみに合宿所の宿泊用の部屋は五人用。
という訳で寮ではひとりひとりに部屋が与えられていたのだが、
今回は五人部屋で複数人と一緒に布団を敷いて寝るという、蓮にとっては地獄の空間だ。

その五人部屋に荷物を置き、
休憩する間もなく一年全員が入れる講堂にて次はオリエンテーション合宿の目的である
『蒼響学園』についての話を学年主任から約三時間聞かされた。

蒼響学園の生徒になってから心がける事。
この学園の教育方針、部活動強制についての説明等の長くつまらない話を長時間聞かされて俺は心底疲れきっていた。
まぁ新一年生がこの学園に慣れるため、知るための合宿なのだし。
それが目的なのだから仕方はないのだけど。

今日、合宿一日目の予定を一応頭の中で整理し確認する。
後は夕食と入浴は済ませたし後は自由時間だけか。

そんな事を考えながら歩いていたら自分が今日から二日寝泊まる五人部屋の前にたどり着いた。
中からは声がする…きっとクラスメイトが夕食と入浴から既に帰ってきてたのだろう。

俺はその部屋の扉を開ける。



「あ…」

「……」

「……おう、えっと…小鳥遊じゃん…」



そうくると思ってた。俺に対する反応なんていつもそうなんだ。
いつも人と関わらない俺に気軽に優しく接してくる変人なんてこんな所には…



「……小鳥遊くん!おかえり。
 あ…小鳥遊くんもUNOやる?
 今皆でやってたんだけど…どうかな?ね?」



変 人 が そ こ に い た 。

そうか…寝泊り用の部屋割りでも俺と渕之上は同じ班だったのか。
オリエンテーション合宿のイベントは部活での班分けなのだが、
寝泊りの部屋割りはクラスで分けられていたらしい。

渕之上はまぁあの時からずっと知り合いなのだけど他のクラスメイトはちゃんと会話もした事がない。

ここ、俺居づらいな。



「……俺はいいや。渕之上達でやってていいよ」



そう言って今来た道を引き返そうと部屋を出ようとしたその時。
座っていた渕之上がいきなり立ち上がる。



「小鳥遊くん…何処行くの?僕も一緒に…」



渕之上が俺に対して何か言い終わる瞬間に俺は部屋を出た。
あいつからあの続きの言葉を聞きたくなかったから。
我ながら性格悪いと思う、最低だと思う。

だけど今の俺はこれが精一杯なんだ。













「なんだあの態度。前から思ってたけど小鳥遊って冷たいよな」

「俺もちゃんと話した事ないぜ。それなのに先輩と一緒にいる所はよく見るよな」

「ってか何だよあれは。あいつあんな態度ばっかり取ってるとクラスに馴染めないんじゃねーか?」



小鳥遊くんが去った後。
クラスメイトが色々と彼の事を好き放題に言う。

止めたい。
でも小鳥遊くんがあんな態度を取っている事は本当で僕は何も言い返す事が出来なかった。
小鳥遊くんのあの態度はやっぱりよくない。
でも彼はきっと自分からあの態度を取っているんだと思うし…。

僕は今何をすればいいんだろう?
そう考えた結果僕はこの部屋を飛び出していた。





++++++++++++++++++++++++++++++++++++++





「はぁ…俺何やってんだ…?」



今日泊まる予定の五人部屋から抜け出して俺が辿り着いたのは合宿所のロビーだった。
ちなみにここまでどうやって来たのかは覚えていない。

ここまで来たんだし…と思いジャージのポケットに入っていた小銭でジュースを買って
そのジュースを飲み干して…自分がやった事を思い出して頭が痛くなってきた。

あんな事したら今夜どうやってあの部屋に戻っていけばいいんだよ…。

我ながら考えなしだと思う。
今朝のバスの中の時と先程の部屋の時といい…何をやってるんだ俺は。

まぁ自分からひとりになろうとして取った行動だ。
全て俺が悪いんだけど。



「「じゃんけんぽん!」」



一人大反省会を開いている最中に聞こえてきたのは聴き慣れた二人の声。
その声のする方に顔をあげてみるとそこには俺と同じ学校指定の青色のジャージを着た、
九頭竜と京ヶ峰の姿があった。

しかも先程俺がジュースを買った自動販売機の前で。



「あぁあぁ…負けた…」

「へっへー今回は俺の勝ちな。じゃあ…これ。缶に入ったおでん!食ってみたかったんだよな」

「こんな時期におでん!?熱くない?今五月だよ?五月!」

「文句言わずに買った買った。負けた方が奢るって約束だっただろ?」

「……五月におでん缶買っちゃう人なんかに奢りたくなんかない」

「おい、それお前。今の時期におでん買う奴全てを敵に回す発言だぞおい」

「……ぷいっ」

「可愛く顔逸らそうとしても無駄だかんな。
 俺はお前の可愛さなんかに反応なんてぜってぇしないからな」

「別にー陸に可愛いとか思われたくないし。
 ただただおれが陸に奢りたくないだけだし」

「負けたら奢るって約束だっただろーが!」

「きーこーえーなーいー」

「理人おおおおお!!!」



うるさい奴らだ。
自然と耳に入ってくる二人の会話は本当に下らない内容で。
そんな二人をじっと見ているとこちら側を向いていた京ヶ峰が俺に気が付いた。



「あ…あれ?小鳥遊くんじゃん。こんばんは」

「あ…」

「お、小鳥遊じゃん。こんな所に一人で何やってんだ?」



九頭竜も振り向いて俺の方を見る。
この騒がしい二人に見つかったのかと思うと何だか気が重い。



「小鳥遊くんはここで…一人でジュース飲んでたそがれてたの?」

「……まぁそんな所」

「でもさっき昴くんがうろちょろと廊下を歩いてたの見たんだけどな…。
 てっきり小鳥遊くんを探してるのかと思ってたんだけど」

「う…」



もしかして渕之上…俺の事、探してる?
そんな馬鹿な。あいつがそんな事までして俺を気にかける理由が分からない。



「あのさぁ…小鳥遊…お前」



微妙な顔をする俺に対し何かを察した九頭竜が俺にずばっと告げる。
しかも今までにないような真剣な顔をして。



「昴とお前の関係とか知らないしどうでもいいんだけど…。
 昴は俺の友達でもあるんだわ。
 あいつを困らせたり傷付けるのなら……俺、お前許さねえから」

「え…?」

「俺から言いたかったのはそれだけ。
 明日のオリエンテーリングは一緒のチームだしやるからには五人で優勝狙うからな。
 今日はしっかり寝とけよ!じゃあなっ」



それだけを告げて九頭竜はくるりと方向転換をして歩いていく。



「あ、陸。……え、えっと。明日頑張ろうね小鳥遊くん。じゃあ!」



置いて行かれた京ヶ峰が少しおどおどする中、
俺の方をチラリと見ながらそれだけ告げて九頭竜を追いかけていく。
その京ヶ峰の言葉に俺は返事が出来ないまま呆然とその姿を眺めるだけ。

自分の中にまるで雷が落ちたような衝撃が走った。

その通りだ…だってそれだけの事を今日だけで仕出かしたのだから。
九頭竜が何かを察して俺に対し怒りを表すのは当たり前の事だと思う。
渕之上は、九頭竜の友達なんだから。



「(…………俺は)」



俺はこれから一体…どうしたいんだ?

誰もいなくなったロビーで俺は既に飲み干していた缶ジュースを握り締めて、
九頭竜が俺に向けた言葉の意味を考えていた――。














あれからどれくらいの時間が経ったのだろう。

九頭竜と京ヶ峰にロビーで遭遇して約二十分が経った。
俺は未だにロビーから動けないまま、ロビーにある大きなソファに座りどうやって部屋に帰るかを考えていた。

寝る前には点呼があるため消灯時間前には部屋に戻らなければならない。
しかしその部屋に戻るという行為が今の俺にとって最難関だったのだ。



「……いつまでもこうしてても意味ないしな」



ついに決心する。ここでうだうだ悩んでいても何も変わらない。
いつものように、教室に入る時のように自然と誰にも関わらないように入っていけばいいだけだ。
誰が何て言おうと俺は別に構わないのだから。

最近青春部の先輩達とよく一緒にいる事が多いかから少し変な錯覚に陥っていた。


俺は誰とも関わらない事を決意してこの高校に入学したのだから。


だから別に今のこの状況なんて好ましいものではないか。
青春部の先輩達のようにしつこくまとわりつく奴らなんてここにはいない。
だから今までのように…中学時代の時に戻るだけなんだ。

そう自分で言い聞かせソファから立ち上がったその時だった。



「……い、いた。小鳥遊くん」

「……!?」



目の前には少し疲れたような表情の渕之上がいた。
俺の名を呼んでいる…俺を探していた?ま、まさかな。

でも何故か渕之上がここに来てくれた事が若干嬉しいと思っている自分もいて。
だからそれが…嫌で嫌で。嫌でたまらない。



「小鳥遊くん…もうすぐ消灯時間だよ。部屋、戻ろうよ?」



渕之上はいい奴だ。それは分かってる。
でも…俺の口から出たのは、やっぱり素直になれない俺の性格を表した一言で…。



「…………なぁなんで俺にそんなに構うんだ?
 俺と仲良くしてお前に何か利点でもあるか?
 それとも謳歌部関連で俺と仲良くしとけとか…言われたのか?」

「……え?」

「俺はお前となんかと仲良くしたくないし…ひとりでいたいんだよ。
 俺の事なんて…もう放っておいてくれっ!!」

「……!!」



驚き目を開く渕之上の表情を見て俺の胸がズキンとまた痛む。
きっとまたあいつは俺の言葉で傷付いたかもしれない。

心の中で『ごめん』と呟きながら俺は、
渕之上の隣を通り抜けて、その場から逃げ出した。


傷付いた渕之上を置いたまま――。



To Be Continued...

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青セン11話でした。
はい「友達篇」はじまりました。今回から友達篇なのですが、今回は学校行事のお話です。
とその前に青春部と謳歌部の関係が大きく進展しましたね、青春部預かり謳歌部。
このお預かりシステムよく分からないシステムかもですが青セン特有のシステムという事で…小さな部に対しての学園側のフォローみたいなものですかね、そんなイメージです。

んでこの話の蓮。うん、わかってます感じ悪いですよね。
心を鬼にしながら感じ悪い感じに頑張って書きました。蓮は友達に対してはやっぱり苦手意識があるのでこういう風にしか接する事しかできないんだよ。という感じを表してみました。
しかしラストあたりの展開…暗くなっちゃいましたね。陸と理人の会話が唯一の癒しになってるかも。
重い雰囲気のまま次回へ…友達篇次回も是非よろしくお願いしますね。

ここまで読んでくださりありがとうございました。感想あればコメントくださると嬉しいです♪